仕事人生を送ったじいちゃんとそれを支えたばあちゃんの本音
毎年年末年始になると、
母方の祖父の実家へ遊びに行くのが
恒例行事となっています。
今年は少し早めでしたが、娘3人を連れて
遊びにいくと、一人暮らしをしている祖母が
昔と変わらない笑顔で出迎えてくれました。
昭和の時代を駆け抜けた祖父
玄関には祖父が飼っていた熱帯魚用の大きな水槽が
干からびた状態で置いてあり、庭先には無造作に
虫かごが転がっています。
僕が子供のころは、夏休みになると必ず泊まりに
来て、夜の10時頃から1時間かけて山奥の街頭に
集まってくるカブトムシを取りに行くのが恒例と
なってました。
僕は毎年それがすごく楽しみで、捕まえてきた
カブトムシを友達に自慢してドヤ顔するのが
好きだったんです(笑)
祖父にとっては僕が初孫だったので、
他の孫よりもとてもかわいがってくれました。
そんなやさしい祖父でしたが、その人生はまさに
昭和の時代を生きてきた人そのもの。
自宅近くの小さなふとんを製造する町工場で
50年以上、汗水垂らして働いていたそうです。
従業員が十数人程度の会社だったので、
給料もあまり上がらず、将来性もなかったと
思います。
そんな状況でも文句ひとつ言わず、ただただ、
家族と会社のために毎日朝から晩まで仕事を
していたと祖母が笑顔ながらに話していました。
その結果、一家の大黒柱として3人の子供を
育て上げ、大きくはないけれど一軒家も立て、
父親としての役目を立派に終えました。
その背中を見てきた僕は、祖父を立派だと思って
いたし、今でもそういった気持ちはあります。
しかし、それと同時に祖母はどうだったのかなと
考えてみました。
ばあちゃんの本音
祖母は祖父が亡くなった後、一人暮らしをはじめ、
たまに遊びに行くとたくさんのお菓子や果物を
用意して待っていてくれます。
そして、祖父の仏壇に向かって、
と声をかけるのです。
祖父は僕が結婚をする前に亡くなったので
ひ孫や奥さんの顔は見ていません。
この前も運動会の動画を見せた際、
そんなことをつぶやいていましたが、こうした
セリフを聞いたのも一度や二度ではありません。
きっと、祖母は祖父と二人でゆっくり過ごす
老後を望んでいたんだろうなー、
と、僕は思いました。
定年の無い祖父
話を祖父に戻しますが、祖父の会社は全社員が
十数人の小さな会社でした。
そのため、一人が欠員するとその負担が周りに
降りかかるため、なかなか休みも取れなかった
ようです。
60歳で一応、定年を迎えたらしいのですが、
その後もアルバイトとして、社員時代と
変わらない生活を10年程続け、70歳手前で
ようやく仕事を辞められたと言っていました。
が・・・。
それもつかの間。
半年と経たないうちに、職場の社長から、
という電話が
毎日のようにかかってきたらしいのです。
責任感の強い祖父は
といって、週に3回ほど、会社に行くように
なったのですが・・・
実はこの時、祖父は体調を崩していて、
大きな病院への入退院を繰り返していたのです。
祖母が言うにはとても仕事に行けるような体調
ではなかったようですが、本人が行くと決めたら
何を言っても聞かない性格だったので、仕方なく
送り出していたそうです。
そして・・・
祖父は72歳で亡くなりました。
肝臓がんでした。
祖母は今でも、あの時のことをこう言います。
と。
昭和の象徴ともいえる人生を突っ走ってきた祖父。
その生き様を「かっこいい」と思っていた時期もあり
ましたが、今ではかわいそうな人生だったのかな?
とも思います。
仕事に追われ、家庭をかえりみる時間すら
与えられずに、この世を去ってしまった部分が、
少なからずあるのではないのかなと。
アップルの創業者、スティーブ・ジョブズ氏も、
仕事一筋人間でしたが、死の淵をさまよってから
家族との時間が大切なことに気が付き、死の直前は
仕事よりも家族を大切にしたのは有名な話です。
誰だって、仕事より家庭の方が大切なはずです。
それを犠牲にしてまで、仕事に打ち込む人生
というのは、残念ながら今の僕には理解できません。
祖父の生き方はかっこよく、男気ある人生だと
思いますが、それは当時の時代が作り上げた
世間の常識的な生き方だったのだと思います。
時代が変わった今、一つの会社で過ごすことが
正解ではなくなりました。
僕らは自分の努力次第で自分の仕事や
未来の生き方を選べるのです。
あなたはどう生きていきたいですか?
PS.
祖父が亡くなった後、
初めて母親の涙した姿を見ました。
父親は黙って下を向いていました。
僕は実感がわかず、泣きもしませんでしたが、
棺に入った祖父を見た瞬間、過去の思い出が
一気にフラッシュバックし、涙があふれ出ました。
人はいつか死にます。
今日かもしれないし、
明日かもしれないし、
10年後かもしれません。
人は命を削ってお金を稼いでいます。
時間は有限です。
仕事を頑張り続けるということは、
自分の時間を削り、死に向かって
走り続けているマラソンのようなものです。
死に対する本当の意味を知った時、
僕は恐怖しました。
生きてるうちに人生を楽しまければな、と。
失われた時間は二度と戻りません。
今、この瞬間も時間は止まることなく、
流れ続けています。
今日と同じ明日を過ごすのもいいですが、
今日と違う明日も面白いと思いますよ。
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